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2008年12月27日 (土)

リニアの需要予想は甘いのか

12月25日付の朝日新聞(朝刊)で、明星大学の橋山禮治郎教授が「リニア新幹線・需要や工費、甘い見通し」と題して文章を書かれていました。

このかたは「リニアを建設することに反対」したがっているように思われ、一方で自分は「絶対に建設するべき」と思っています。よって、言い分が全体としては納得できず読後感は悪かったのですが、自分が興味のあることでこんなに対極的な立場からわかりやすく文章を書く人がいるのは珍しいなと感じました。

何のために、誰のためにつくるのか

JR東海の需要予想を批判し、1990年からの17年間で1割しか実績は伸びておらず、ましてや人口はこれから減少するので、ピーク時は東海道新幹線への「2階建て車両の導入で十分」としています。

これこそリニア新幹線が完成した後に東海道新幹線が行うべき活性化策のひとつであり、いまの状況で行うことじゃないと思いました。橋山先生が今回書いたことの中で、イチバンおかしなところだと思った部分です。
いま2階建て車両を入れたら、せっかく車両の規格統一やパターンダイヤができあがりつつあるものが、また乱れてしまいます(*1)。

リニアが完成し、そちらへ需要の多くが流れて結果的にダイヤに空き容量が増えた後に、東海道新幹線が「リニアに対する東海道新幹線が持つ長所」として、リニアに比べた車両の快適さや眺望のよさを売出せばよいのです。

ぼくもリニア完成後には、かつてあった2階建て車両や個室など、残念ながらいまの時点では必ずしもできていない「顧客需要を幅広く捉えた商品づくり」を期待してます。

1990年からいままでのような、日本全体の景気が低迷する中で1割も輸送実績が増えたってのは、逆にすごい結果であり、JR東海の輸送力限界論が間違ってない言い分だと思わせます。

名古屋以西の利用者が名古屋でリニアに乗り換えることも考えにくい

これは言い分に理解できる部分もあります。

何度も書きますが、ぼくはできることなら、東名阪を税金負担で完成させてもらいたいと思ってます(*2)。JR東海はあくまで東名間を自己負担でと言ってくれているのですから、だったら先生みたいな人が「リニアの効果を広く実現するために、名阪間は税金を投入すべき」とくらい言ってほしいものです。

車窓を楽しめない鉄道が好まれるのか

現状の東海道新幹線だって、車窓目当てに乗っている人(*3)は全体の利用者からすれば、ごくごくわずかのはずであり、多くの人にとって鉄道は移動手段という視点が欠落している、リニアを否定したいための理由付けな気がしました。

ぼくは鉄道好きなので、先生のように車窓のことまで気にしてくれるのはありがたいですが、それをリニア否定根拠にされるのは甚だ気分を害されました。

客観的で厳しい事前評価が求められる

民間会社が新たに挑戦することに対して事前評価が好ましいかは、時勢の問題とも絡むので判断が難しいですよね。いまは「事後評価でいいんじゃないの」という流れのはずですから。そもそも「客観的」って、誰が判断するんですかね(*5)。

-----橋山先生の書いたことを読んで思ったこと----

リニア新幹線のことは、ただJR東海が言いだしっぺという問題にとどめず、北陸新幹線との直結による新幹線ネットワークの拡大、東阪航空路線について航空路線を必要な路線へ振分ける(*4)など、日本の交通政策全体にかかわる一大プロジェクトとして考えてほしいなと思いました。
橋山先生は日本開発銀行出身の、政策学を教えてくれる先生なんですから。

在来線利用者(の一部)からは酷評されるJR東海ですが、これだけ何度も「自前で費用負担してもいいよ」と言われて、それでも消極になる日本ってもったいないです。


(*1):現状で東海道新幹線に2階建て車両を導入すれば、重量増大に伴うスピードダウンが避けられないという前提に立っています。
(*2):会社の経営状態で建設スピードが落ちる(=建設費が増大する)ことのないように、公的資金で一気に建設する方が、利用者全体への負担は軽減すると思ってます。
  滋賀県新駅と北陸新幹線
  大阪市内のリニアは新大阪?
(*3):車窓で富士山がきれいに見えると、客席からよく携帯でパシャパシャ撮影する光景が見れますが、あれだって「たまたまきれいに見えた」から撮影するのであって、撮影したいために「飛行機じゃなくて新幹線にした」って人は、1編成1000人以上の乗客からすれば、ほんの少数なことだと思ってます。
(*4):羽田・関空の空いた枠を、東京や大阪へ航空機で行かざるを得ない人たちへの路線拡大に使えます(伊丹については別の意見を持ってます)。
  伊丹空港廃止に向けた一歩
(*5):ぼくは「客観」ってもの言いをされるのがキライです。そのときどきの状況において「何かの事情」で立場を選ぶことがあるだけで、世の中に誰が見ても絶対に正しい判断はないと思ってます。そんなことがあったら、かえってこわいです。

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コメント

こんばんは

>名古屋以西の利用者が名古屋でリニアに乗り換えることも考えにくい

乗り換えを嫌う人は案外多いみたいで、新在直通の秋田新幹線が開通して東京~秋田が乗り換えなしで移動できるようになってからは、羽田~秋田の飛行機利用者が減少したのは記憶に新しいところです。

リニアも大阪(新大阪)までくると、利用者が激増するでしょう。

投稿: オフサイド | 2008年12月28日 (日) 21時51分

<オフサイドさん>

>乗り換えを嫌う人は案外多いみたいで

自分の例だと、東京に行った際に「(時間に余裕があれば)階段がめんどいから、快速に乗換えずに各駅停車で延々と移動」みたいなもんでしょうか(^^;)。


>大阪(新大阪)までくると、利用者が激増するでしょう

税金の有効な使い道になると思ってます。
第二東名をつくるより、道路交通量を総量として減らす方法を考えた方が、地球環境にもよさそうなんですけどねぇ。

投稿: ちゃいにーず | 2008年12月29日 (月) 14時10分

 ちゃいにーずさん、こんばんは。

* ピーク時は東海道新幹線への「2階建て車両の導入で十分」としています。

 2階建て車両で時速270キロを出すことができたら、JR東海も採用したでしょう。当面の輸送力増強手段としてはいいです。騒音がネックだったのでしょうか?

* 名古屋以西の利用者が名古屋でリニアに乗り換えることも考えにくい

 私も、名古屋での乗り換えが、リニアの価値を大きく損なうことになると思っています。公費を投じてでも大阪までつくらないといけないですね。

* 車窓を楽しめない鉄道が好まれるのか

 車窓が楽しいほうがいいに越したことはないのですが、リニアはビジネスのための列車なので、「絶対に必要だ」ということはないでしょう。

投稿: たべちゃん | 2008年12月30日 (火) 02時35分

<たべちゃんさん>

>時速270キロを出すことができたら

技術的な部分や費用対効果で「2階建かつ270キロ運転」はそもそも無理と思っていたのですが、そういう点では大丈夫なのかな?

>公費を投じてでも大阪までつくらないと

そういう声が大きくなればいいんですけど。
税金を投入するとなると、どっかから削らないといけないので、政治的事情と絡むのが、投入までのネックになりますね。

投稿: ちゃいにーず | 2008年12月30日 (火) 22時49分

私は、はっきり言ってリニア計画は中止すべきだと思います。理由はもちろん①少子高齢化、②国内人口減少、③東海道新幹線利用率の頭打ち(というか減少し始め)、④巨額な赤字国債と不況、⑤リニアの巨額な建設費用(5兆円強と言われる)に対する投資効果の疑問等です。今更何故リニア建設?と言う感じです。外国人移民等で国内人口が増加化しない限り、建設中止すべき。それよりも現東海道新幹線を改修{改良・TGV方式導入、一部区間のバイパス新設(線形が特に小さい所が在る区間。例:「小田原ー静岡」間)・一部区間の複々線化(例:東京口。通勤対策も兼ねる)してより高速化・増発する方が現実的だと思うし、JR東海を第2の国鉄にしてはなりません。

投稿: 宮木栄治 | 2010年10月23日 (土) 13時51分

<宮木さん>

>高速化・増発する方が現実的

どこに根拠を求めればいいのかわからないし、ぼくは希望的観測でしかモノを言えない立場ですが、やっぱし「鉄道を利用する方が(ほかの移動手段よしか)便利」という状況を作り出して、鉄道に目を向けさせ続けるにはリニアって有力なツールだと思うんですけどね。

既存施設の改良も必要でしょうが、それだけでは「マイカー」や「格安ツアーバス」といった、地球環境阻害要因を減らしにくいって感じがします。

投稿: ちゃいにーず | 2010年10月27日 (水) 22時01分

利用客が1割増加してもそれが続くか見極める必要があると思います。「失敗→第2の国鉄化」は全く許されません。現時点ではリニア建設は見合わせるべきだと思います。

投稿: 宮木栄治 | 2011年6月 7日 (火) 23時49分

<宮木さん>

「失敗→第2の国鉄化」は全く許されません。

赤字が少ないうちに、国民の税金で穴埋めする体制をキチンとつくれなかったことが、国鉄の財政泥沼化の原因だと思うので、おカネの使い道を「持てる者より持たざる者に」という視点があればいいと思うんです。

どうしても反対と言われてしまうと、どうしても建設してほしい側としては、これ以上話しが進まなくなりそうですけどね。

投稿: ちゃいにーず | 2011年6月11日 (土) 06時03分

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